高血圧、糖尿病などの生活習慣病の増加を背景に、狭心症・心筋梗塞などの虚血性心疾患は増加傾向にあります。また、高齢化にも関連して心房細動などの不整脈ならびに心不全の頻度も増加しております。更には各種薬物治療およびカテーテル治療の進歩に伴い、今まで治療困難とされていた循環器疾患の治療が可能となりました。このことから各種循環器疾患の早期診断および介入がより重要となっております。当科では、経験豊富な循環器専門医が、最新の診断装置を駆使しながら迅速かつ低侵襲に正確な診断を行うと共に急性期の治療から、回復期の心臓リハビリ、慢性期のフォローまで一貫した医療を提供します。
狭心症・心筋梗塞など虚血性心疾患、心房細動・発作性上室性頻拍・洞不全症候群・房室ブロックなどの不整脈、下肢閉塞性動脈硬化症などの末梢動脈疾患、心臓弁膜症、心不全、大動脈瘤、高血圧/低血圧 など
心臓から大動脈に血液が送り出されますが、この大動脈の根元から心臓自体に酸素や栄養を送る冠動脈という血管が枝分かれしています。この冠動脈に動脈硬化によってコレステロールが溜まって狭くなったり、痙攣が起きて細くなったりした結果、心臓の筋肉への酸素や栄養が十分に送られないようになった状態が虚血性心疾患になります。心臓の筋肉が酸素不足・栄養不足になると胸痛として自覚されます。冠動脈が狭くなり、労作時などに一時的に酸素不足・栄養不足の状態になるのが狭心症であり、冠動脈が完全に閉塞して心筋に酸素や栄養が全く行かなくなって心臓の筋肉が壊れてしまう状態が心筋梗塞になります。これらの疾患に対しては下記のような検査や治療を行います。
特に近年、画像検査の進歩や大規模試験の結果から、冠動脈CTおよび負荷心筋シンチによる評価が推奨されています。当院ではこれらの画像検査に加え造影剤が不要な冠動脈MRIをスムーズに提供できる体制を整えています。
心臓の筋肉が酸素不足・栄養不足になると心電図のST部分やT波に変化を生じます。その変化を調べる検査が心電図になります。
冠動脈の狭窄の程度が酷い場合、心臓の筋肉の慢性的な酸素不足・栄養不足により、心臓の筋肉の動きが悪くなります。その動きを調べる検査が心エコーになります。
心臓に運動や薬剤で負担をかけると心臓の筋肉で消費される酸素や栄養の必要量が増加します。冠動脈に狭窄があると心臓の筋肉に送ることのできる酸素や栄養が減少してしまうため、負担がかかった時に酸素・栄養不足となり心電図波形に変化が出ます。
冠動脈の狭窄があるかどうか造影剤を使ったCTで検査します。20分程度の検査で、冠動脈における動脈硬化性変化の有無、冠動脈狭窄の部位および程度を正確に評価できます。
冠動脈CTよりは解像度は低く、時間もかかりますが、造影剤を使用することなく冠動脈の狭窄を評価することが出来ます。腎臓が悪く、造影剤が使用できず、冠動脈CTが出来ない場合などに行われます。
心臓の筋肉のどこに血流不足があるか放射性同位元素を使って調べます。造影剤は使用せず、少し時間はかかりますが入院の必要はありません。特殊な注射薬を使うため前もって予約が必要です。
カテーテル(細い管)を使って冠動脈に直接造影剤を注入し、冠動脈に狭いところがないか診断します。短期間の入院が必要ですが、狭いところがあればそのまま治療(経皮的冠動脈形成術)を行うことができます。最近はほとんどの検査を手首の血管から行いますので、安静時間も短くなっています。
冠動脈に狭いところがあった場合に血管を広げる治療です。カテーテルから風船のついた管を冠動脈にいれて、圧をかけて狭くなった冠動脈を広げます。多くの場合「ステント」という金属の網を留置して、しっかり広げます。石灰化が酷く血管が石のように固くなっている場合には、ロータブレーターという機械を使って固いところを削る治療を行うこともできます。
洞不全症候群・房室ブロックなどの様な徐脈性不整脈(脈が遅くなり、めまい・失神・倦怠感・息切れなどを生じる)と心房細動・発作性上室性頻拍などの様な頻脈性不整脈(脈が速くなり、動悸・胸痛・めまい・息切れなどを生じる)があります。
徐脈性不整脈や頻脈性不整脈は、常に起きているような場合には普通の心電図検査で見つけることができますが、自覚症状を感じている時だけ一時的に起きるような場合には、通常の心電図では捕まえることが困難です。そのような場合に、携帯型心電計(症状出現時に自分で記録)・ホルター心電図(1日間記録)・イベントモニター(2週間記録)・植込み型心電計(3年間記録)を使用することで、不整脈が見つかる可能性が格段に上昇します。様々な病院で何度検査を行っても不整脈が捕まらなくて困っているようでしたらご相談下さい。
洞不全症候群や房室ブロックなどの徐脈性不整脈の場合、自分の心臓が十分な脈拍を作れなくなってしまいます。ペースメーカーという機械を植込み心臓に電気刺激を与えて足りない分の脈拍を補うことで、心臓の機能を保つことが出来るようになります。当院では、心室中隔ペーシングという正常の電気の流れに近い、心不全を来しにくい方法を主に行っています。以前はMRI検査が不可能でしたが、現在は治療後安定すればMRI検査が可能となります。
心房細動・上室性頻拍などの頻脈性不整脈の場合、多くは心臓内に不整脈の回路が形成されて不整脈を生じますので、カテーテルアブレーションによって回路を形成する心筋を熱で焼きつぶすことで、回路を回らなくし、不整脈を起きなくすることが可能となります。発作性心房細動の場合は、カテーテルで肺静脈の周囲を焼いて電気を通らなくすることで70-90%の症例で治療が可能です。また、発作性上室性頻拍の場合は、95%以上で根治が可能です。当院では、安全かつ正確な治療を行うために、カテーテルなどの位置情報を3次元で立体的に映像化するマッピング装置(CARTO3)を使用しています。
足に血液を送る動脈が狭くなると、足への血流が不足するため、暫く歩くとふくらはぎがだる痛くなり、休憩すると改善するといった症状が出現する様になります。動脈の狭窄が酷くなると、歩行時だけでなくじっとしていても足が痛くなり、足の傷も治らなくなるといった症状に進行していきます。これも動脈硬化が原因でおこります。
両手足の血圧を同時に測定して、血管の固さ(動脈硬化の程度)や動脈の詰まり具合などを評価します。もし、足の動脈に狭いところがあると足の血圧が低下します。
超音波で血管の状態を観察することで、動脈の狭窄の部位・狭窄の範囲・動脈へのコレステロールの沈着具合や石灰化の程度などがわかります。また流れる血液の血流速度を測定することで狭さの程度を詳しく知ることができます。
動脈の狭窄部位や狭窄の範囲を詳しく評価するとともに、3次元再構成により立体的に評価可能です。通常は解像度に優れる造影CTが用いられますが、造影剤の使用が困難な場合や石灰化が酷い場合にはMRIを行います。
皮膚表面から1-2mm程度の深さに存在する毛細血管の血圧を測定することで、皮膚における微小循環の血流障害の程度を評価することが出来ます。
足の温度分布を測定することで、血流障害の部位と程度を評価することが出来ます。
人口の高齢化に伴って、動脈硬化を背景とした大動脈弁狭窄症などの心臓弁膜症が増加傾向にあります。初期の自覚症状は、息切れ程度でありますため、年齢的なものと誤解され、狭窄が相当進んで、心不全・胸痛・失神などの酷い自覚症状が出現する様になって初めて気づかれることも多く、見つかった時にはすぐに手術が必要な程度まで病状が進行している場合も多くみられます。聴診や心エコーにて容易に診断できますので、気になる場合には積極的に検査を受けて下さい。
超音波で、弁の動きや機能を調べることで、容易に弁膜症の存在や程度を評価することが出来ます。外来で検査可能で20〜30分程度でおわります。特に苦痛などはありません。
手術が必要となった場合や心エコーだけでは評価が難しい場合には、カテーテル検査を行い、心臓弁膜症に関し詳しく評価を行います。また、カテーテル検査で冠動脈を含めた心機能についても評価し手術に耐えられるかどうかも調べます。
心不全というのは病名ではありません。心筋梗塞・弁膜症・心筋症など様々な疾患の進行によって心臓の働きが損なわれ、心臓が身体活動するのに必要な血液を送り出すことができなくなった状態を心不全と言います。下肢のむくみ・息苦しさなどの症状が出現します。下肢のむくみや息苦しさに対しては、減塩を中心とした食事療法や薬物による治療を行います。同時に、心不全になった原因の心疾患が何かを調べる必要があります。
特に当院は心臓CTおよびMRIを用いた心筋症の診断に力を入れております。
心臓の筋肉の動き・弁の状態・血流を調べる検査です。現在の心機能を調べると同時に心不全の原因疾患の評価が可能です。
心臓に血液を送る冠動脈だけでなく、心臓の筋肉そのものの性状まで詳しく評価をすることが出来ます。心臓の筋肉が傷んで壊れることによって生じる線維化のパターンを調べることで、心不全の原因となった疾患を詳しく突き止めることが可能になります。
大動脈瘤は、破裂や感染を起こすまでは、ほぼ自覚症状が現れることがなく、別の疾患に対する検査で偶然発見される場合が殆どです。胸部では5-6cm以上、腹部では4-5cm以上、末梢血管では3-4cm以上では破裂の危険性が高まりますため手術が必要となります。
超音波によって血管を調べることで、動脈瘤の大きさや範囲を調べることができます。
動脈瘤の程度や部位を3次元再構成により、周囲に分枝する血管も含めて立体的に詳しく評価可能です。通常は造影剤を用いて評価を行います。
造影剤の使用が難しい場合や血管の石灰化が酷い場合などでの評価に適しています。CT同様、3次元再構成が可能で立体的な評価ができます。
高血圧は、最も頻度の多い循環器疾患になります。余程進行しないと自覚症状が現れないため、治療すること消極的になられる方もおおいですが、放置すると長期的に動脈が傷む原因となり、他の動脈硬化疾患を生じるリスクを上昇させます。また、逆に低血圧では、立ち眩み・めまい・倦怠感などの症状があり、別の原因疾患が隠れていることがあります。
24時間断続的に血圧を測定することで、普段自宅や診察室での血圧では得られない、高血圧のパターンを評価することが可能になります。また、降圧薬の薬効評価を行うことも可能であり、各個人にあったオーダーメイドの内服調整が可能です。
上記の疾患以外の様々な循環器疾患に対応しており、以下の様々な検査を施行可能です。気軽にご相談ください。
睡眠時無呼吸症候群のスクリーニングとなる検査になります。睡眠時無呼吸症候群に対しては、CPAP療法だけでなく、当院歯科と協力しマウスピース作成も可能です。
血管内皮細胞は血管の一番内側の細胞で、血管の正常な状態を維持するのに大切な役割をしています。手の動脈径の変化をみることで、血管内皮細胞の機能を調べることができ、動脈硬化によって生じる疾患のリスク評価することができます。
超音波で首の動脈の状態を調べます。頸動脈に動脈硬化があり、コレステロールの沈着を認めること自体が脳卒中の原因となるだけでなく、頸動脈の動脈硬化の程度を知ることで、全身の動脈硬化程度を類推することが可能になります。
下肢の静脈に静脈瘤や血栓がないかを調べます。静脈瘤は美容的な問題だけでなく、下肢の痛み・痒み・疲労感などの原因となる場合もあります。また下肢静脈の血栓は肺塞栓症・肺梗塞・肺高血圧など重篤な病態を引き起こす可能性があり、抗凝固療法などの治療が必要になりますため注意が必要です。
診療統計のページをご参照ください。