医療機器及び治療の高度化に伴い、当院では平成26 年度から手術室専任の臨床工学技士が現在3 名配属されています。手術関連機器等の取扱い・管理体制の構築と、より安全な医療の提供に向けて取組みを開始しています。
当院の手術室部門では主にバスキュラーアクセス関連や腹膜透析カテーテル関連、泌尿器科手術、手根症候群・ばね指、下肢切断術、腎生検、前立腺生検、腎摘、腎移植などを中心に手術を行っています。
泌尿器科分野では光選択的前立腺蒸散術(PVP)や経尿道的尿管結石破砕術(TUL)や経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)、経尿道的前立腺切除術(TUR-P)といった手術症例は内視鏡を使用した、低侵襲手術へと変換しています。下記に主な業務内容を紹介します。
麻酔器の始業点検
手術室には麻酔や手術に欠かすことの出来ない多種多様の医療機器があります。決められた始業点検、日常点検、定期点検を計画的に実施し、また機器使用中のトラブル、故障にも迅速に対応し手術が滞る事がなく、安全に行えるよう努めています。また、修理困難な場合はメーカーに依頼をして対応しています。
当院では手術室看護師と共同で業務を行っており、術前に収集した情報などをもとに手術に必要な器械・器具の準備、すぐに使用できる器械の把握、器械の使用方法などを熟知し緊急時にも対応できるようにして手術環境を整えています。また、器械出しや外回り業務なども行い、看護師さんが手術室リーダー業務や術前訪問、器械出し、術中看護、看護記録や申し送りなど看護業務に専念出来るよう連携を取っています。
清潔・不潔の徹底だけでなく、術野の安全を守り、時代に応じた器械・術式の知識、個々の患者に応じた臨機応変な対応に努めながら医師や看護師と共に、安全な施術が行われるようにします。
手術の準備風景
血液透析を行う際、充分な血液量が確保できるように、腕の動脈と静脈を体内または体外で直接つなぎ合わせた血管の事です。血栓などで腕の血管が狭くなると血液透析に支障をきたします。
シャント部の狭窄音発見時等に血管造影検査を行い、血管内に造影剤を流しエックス線で撮影することにより、血管の状態を観察する検査法のことです。
この狭くなった血管に細い管を通し、バルーンカテーテルで血管を内側から拡張することで、血流を確保、再開させる治療法です。
そのシャント造影検査・PTA において、医師の補助業務を行っており、その際に必要な物品の準備や器械開け、術中看護、術中記録を行っています。また、造影剤アレルギー等で造影剤を使用出来ない患者さんのために血管エコー下でのPTA にも対応出来るようなっています。
PTA 後は止血介助を行い透析室にて血液透析を行う患者さんの付き添いや申し送りも行っています。
手術室臨床工学技士は透析室業務も行っており、日頃から透析患者さんのシャント状態を把握でき、手術室業務にフィードバック出来る環境にあります。術中での患者さんや医師とのコミュニケーションなどレスポンスの良い対応が出来るように努めていく事が現在の目標です。
実施件数は診療統計をご参照ください。
PTA 後の透析室での申し送り風景
手術室では術式に応じて様々な医療機器が使用されます。臨床工学技士はその手術に立会い、安全に施行できるよう、各装置の準備と設定、術中の調整など臨床支援をしています。
現在移植の手術には、1名の臨床工学技士が立会っています。主に内視鏡や電気メス、気腹装置などの設定や術中の調整などを行い、外回り業務も行っています。その最中に、先程も言いましたが様々な機器が手術室にあり、コンセントに随時接続されて使用されているので機器の使用が開始される際に、総使用電力量が手術室の電源容量をオーバーし、ブレーカにより手術室への電力供給が遮断されてしまう恐れがないように各電源容量を把握し、アイソレーションモニタ(絶縁監視装置)も常にモニタリングし対応しています。
移植の手術には、医師を中心に看護師、薬剤師、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士のチームが一丸となり連携を取りながら安全で確実な手術が受けられるように万全の体制で手術に臨んでいます。
腎移植手術風景
手術室で使用する医療機器は日々進歩を続け、より高度化・複雑化した機器へと変わってきています。 専任化してまだ間もないですがそんな高度化する医療機器に対応すべく、今後はさらなる業務の拡大を考えています。 私たち臨床工学技士はチーム医療の一員として機器管理や機器のトラブル時対応などを行い、より良い安全で質の高い医療が提供できるようこれからも努めていきます。